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才能という名の暴力。映画「響 -HIBIKI-」 あらすじと感想(ネタバレなし)

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3行でわかるあらすじと感想

 

あらすじ

 

  • 高校生の響(ひびき)という少女には圧倒的な誰もが認める文学の才能がある
  • その才能は世間にも注目されていくが、響の暴力的で奇っ怪な行動に非難や中傷が集まってしまう
  • それでも信念を曲げない彼女の行動は、次第に関わっていく人々の心を動かしていく

 

感想

 

  • 天才というのはある種で暴力に近いものだと感じた
  • 宣伝で放送されているようなバイオレンスな表現よりも、響を取り巻く人間模様の方が丁寧に描かれている
  • 『響』という掴みどころのない、何をするのかわからない少女の行動に見入ってしまう

 

 

 

 

詳しいあらすじと感想

 

 

あらすじ

 

とある出版社に送り主が不明の文学新人賞の応募小説が届く。送り主が不明のため新人賞は失格になるはずだった。しかし、編集者の花井ふみ(北川景子)がその小説の素晴らしさに圧倒され「私はこの小説を世の中に出すために出版者になったのかもしれない」と言うほど魅了される。そこからなんとか新人賞に作品を通過させるために、作者を探し出そうとする。

 

小説を書いた高校生の響(平手友梨奈)は読むのも書くのも愛しているのだが、新人賞に応募した理由が「自分の価値を確かめたかった」という理由であったため、『小説家になりたい』というような意思はなかった。けれど、響の小説は他の作家がすぐに認めるほどの桁外れの才能があり、世間にもすぐに知れ渡っていくことになる。

 

しかし、響は自分の考えや信念をまったく曲げない少女であり、常識が通用しない人物であった。不良に「殺すぞ」と脅されれば自分を守るために相手の指を折り、友をバカにされれば大作家であろうと顔を蹴り、頬を殴られればお返しにパイプ椅子で殴り返す。けれども、彼女のそれらの行動は友のためであり、自分の信念を貫くためであり、その一貫した行動は次第に周りの人たちの心をも魅了していく。

 

その反面で響の才能が世間に注目されるとともに、暴力的な行動はスキャンダルとして世の中に’取り上げられるようになっていく。友、大人、社会、世間といった様々な軋轢の中で、信念を曲げない天才はどう生きていくのか --------------

 

 

 

 

 

感想

 

 

『天才』という名の『暴力』 - 才能があれば何をしても許されるのか

 

「響 -HIBIKI-」という映画を見終わったあとにすぐに『才能は暴力』という言葉が頭の中によぎった。映画の中で響はまぎれもない天才であり、誰もが認める才能を持っている。それゆえに『天才は何をやっても許されるのだろうか』ということが心に残る作品であった。

圧倒的な才能というのは暴力だ。誰もが認める才能があれば、多少の問題行動も許されてしまうのである。

 

 

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この映画は、テレビCMや映画予告などでは主演の平手友梨奈の蹴り姿や、屋上からの飛び降りシーンなどを多く流しているため、映画を見ていない人はバイオレンスな映画という印象があるかもしれない。

しかし、この映画の本質はそれよりも『天才』と『凡人』という対極する構図を描くことに重きを置いているように感じた。

 

圧倒的な才能というものを見せつけられたときに、人はどういう心理になるのかがよくわかるのだ。あるものはその才能にひれ伏し、ライバルは心を折られ、努力してきたものは嫉妬し、ベテランはその才能を恐れ、世間はそれに熱狂する反面で無責任な噂を流す。

 

 

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(引用:映画『響 -HIBIKI-』予告 - YouTube

 

 

響と正反対の人物として登場するのが、小栗旬が演じる山本春平だ。彼は10年もの月日を小説の時間に費やし、芥川賞を狙っているのだが未だにその芽がでない。彼は努力を惜しまず、家族と過ごす時間を費やしても小説を描き続けているのにもかかわらずだ。

 

『努力が報われるとは限らない』というのはよく聞くセリフであるが、山本春平の姿を見ていると、響の圧倒的な才能の前には無力なのである。そうしたことを見ていると世の中すべてが才能で決まってしまうのではないかと悲観してしまう。

 

 

 

 

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(引用:映画『響 -HIBIKI-』予告 - YouTube

 

 

また、響の行動は暴力的で奇っ怪なものが多い。それらは『道徳的には正しい』が、暴力を振るうという面では『世間的には正しくない』ものばかりなのだ。しかし、その信念を貫く意思に周りの大人は次第にその行動を認めていく。

 

これらの行動はあくまでも天才的な才能があって許されるものである。もしも、彼女に才能がなければただの社会不適合者になり、世間から蔑まされる人間になるだろう。

 

 

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

 

 

 

芥川賞受賞作のコンビニ人間という小説がある。この小説では『世間とずれた人間は静かに排除されていく姿』が書かれている。

 

コンビニ人間では人の心が理解できない36歳の女性が主人公だ。彼女の人の心が理解できないという特殊な性格なため、コンビニでアルバイトすることしか出来ないのだ。

36歳で恋愛もしたことがなく、結婚もしたことがない彼女は無理やり世の中に合わせることによって、なんとか生活していけている。しかし、世間的には『なぜ結婚しないのか』『なぜ未だにコンビニバイトなのか』という好奇な目で見られる対象になってしまうのである。世間とズレのある人間は当たり前のように排除され、社会の中で均一化された人間に仕立てあげられていくのだ。

 

 

コンビニ人間と響の根幹にあるテーマはまったく別物であるが、共通する点としては『自分と世間のズレ』というものがある。それらのズレは信念を通すかどうかの違いもあるが、やはり才能があるかどうかということも大きく影響している。

コンビニ人間の主人公がもし『コンビニで働くこと』ではなく、響と同じように文学の才能がある人間であれば、世間からの目は大きく変わったことだろう。

響きを見ていると世の中はやはり才能がすべてなのかと映画を見ている途中で考えてしまった。天才という名の暴力。人は本当に圧倒的な才能の前ではひれ伏すしかないのかもしれない。

 

 

 

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(引用:映画『響 -HIBIKI-』予告 - YouTube

 

しかし、天才である響が楽をして生きているということは決してない。常に傷つきながら前に進んでいく。凡人が努力して秀才となる苦しみの一方で、天才は世の中の軋轢と闘っていかなければならないのかもしれない。『出る杭は打たれる』というが、天才といわれる人たちは、もしかしたら大抵は世に出る前に潰されていくのかもしれない。コンビニ人間の主人公のように、世の中から爪弾きにされる可能性が十分にあるのだ。

 

そして一度世の中に放たれた才能はそれを枯らさないために、そこから走り続けなければいけない。テレビに出ている芸能人が世間から『あの人すぐに消えたよね』と言われることがあるように、真っ直ぐに突き抜けていかなければならないのである。

 

 

 

 

 

 

『平手友梨奈』と『響』

 

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映画を語る上でかかせないのが平手友梨奈という主演の存在だ。平手友梨奈は響と大きくリンクする部分がある。平手友梨奈は欅坂46の絶対的センターであり、その存在感は歴代のAKBグループをすべて含めても随一である。

 

彼女の才能は秋元康が最も認めており、新曲や振り付けなど平手友梨奈に直接連絡をとってやりとりすることがあるほど認められている。(AKBグループのメンバーは秋元康と話したことすらないメンバーが多数いる)

 

 

 

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彼女はまだ17歳の少女であり、数年前まではどこにでもいる少女であった。そして共演した小栗旬や、同じAKBグループの指原莉乃は平手友梨奈の印象を『思ったよりも普通だった』と語っている。

 

 

 

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そんな彼女のどこに『響』と重なる部分があると言えば、やはりその信念を貫く意思だ。平手友梨奈は欅坂46の曲やPVやダンスなどの演出に納得ができない部分があれば、それを直接進言しているのだ。響に出演する際も、監督に『脚本がおもしろくない』ということを伝えたほどだ。

 

彼女がもし普通のアイドルであれば、曲や演出への口出しなどは受け入れられないだろう。しかし、圧倒的な才能と的確な言葉によってそれが成り立っているのだろうと思う。(もちろん秋元康が認めているということも込みの話しである)

 

 

 

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そしてやはり平手友梨奈も常に闘っているのだと思う。紅白歌合戦で過呼吸になったことを覚えている人も多いかもしれない。彼女はプレッシャーに強い人間ではないのかもしれない。こういった平手友梨奈の行動を『演出だ』という人間もいるが、議論している時点でその才能に巻き込まれている。才能にあてられている世間の一人になっているのだ。

 

 

響という天才はいずれ信念曲げる瞬間がくるのかもしれないし、その才能を発揮し続けるのかもしれない。そしてそれと同時に、平手友梨奈がこの先でアイドルとしてどう生きていくのかは誰にもわからない。その才能を見届けていくことで、『才能があれば何をしても許されるのか』ということへの一つの答えがでるのかもしれない。

 

 

 

響?小説家になる方法?(1) (ビッグコミックス)

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小説 響 HIBIKI (小学館文庫)

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