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小説「ハサミ男」のあらすじと感想

 

ハサミ男 (講談社文庫)

 

 

 

 

 

3行でわかるあらすじと感想

 

あらすじ

 

 

  • 女子高生の喉にハサミを刺す連続殺人犯である『ハサミ男』の視点で物語は始まる
  • ハサミ男が次に狙っていた女子高校生が別の殺人犯によって殺されてしまうのだが、殺しの方法がハサミ男を真似たまったく同じ方法だった
  • なぜその子が同じ手口で殺されたのか知るために、ハサミ男が少しずつ事件の真相に近づいていく

 

感想

  • 連続殺人犯のハサミ男が「自分と同じ手口を使った殺人犯を探す」という設定だけで興味を惹かれるおもしろさがある
  • 日常と異常をいったりきたりし、読んでいて心が乱され小説のトリックが明かされるまでまったく気づけなかった
  • 最後のエピローグまで美しく、終わったあとの満足度が高い

 

 

 

 

詳しいあらすじと感想

 

あらすじ

 

女子高生の喉にハサミを突き立てる連続殺人事件が東京で起きていた。世間ではこの殺人犯をハサミ男と呼び、猟奇的殺人として話題となっていた。しかし、ハサミ男は入念な計画をたて、期間を空けて殺人を犯していたため証拠も見つからず、事件解決には至っていなかった。

 

物語はハサミ男の視点で始まる。2人の女子高校生を殺害したハサミ男は、ついに3人目に殺すべきターゲットを見つける。ハサミ男はいつものように、時間をかけてじっくりと慎重に女子高校生の情報を集めていく。家族構成、友達、帰宅時間、休日に行く場所……様々なデータを集めた上で計画を実行しようと思っていた。

 

しかし、ハサミ男が殺人を実行しようと思った矢先にターゲットの女子高校生が別の殺人事件によって命を落としてしまうのである。しかも奇妙なことに、ハサミ男とまったく同じ手口で、ハサミ男の新たな殺人として仕立て上げられていたのだ。

 

なぜターゲットである女子高校生は殺される必要があったのか、またハサミ男の犯行を真似る必要がどこのあったのか。それらを知るためにハサミ男は犯人のことを少しずつ調べ始める。

 

 

感想

 

ミステリーを人に勧めるのは難しい。少しでもその内容が伝わってしまうと、そのトリックがわかってしまうからだ。僕はネタバレが嫌いな気持ちが強く、小説や映画はフラットな状態でみたいので「衝撃のラスト!!」などの煽り文句も知りたくない。

 

例えば「この小説は最後の一行で犯人がわかる」(念のため言っておくがこれはハサミ男の内容でなく例え話しだ)というような感想を僕が聞いたとする。すると小説の中間あたりでのワクワクが薄れてしまうのだ。もし何も知らない状態で読んだら「え?もうかなり後半だけど、いつ犯人がわかるの?これ本当に伏線を回収できるの?」と読んでいる間中ずっとドキドキしていられるからだ。少しでも内容を知ってしまうとミステリーの醍醐味である種明かしの要素が薄くなってしまうと僕は思っている。

 

だからここでも出来るだけネタバレをしないように内容を伝えたい。この記事に書いてあるストーリーは、文庫本の裏に書いてあるあらすじ程度に収めてある。どうしても人に教えたいほどおもしろ作品なのだ。(もしネタバレだと感じる部分があったら本当に申し訳ない)

 

ハサミ男はまず初めにその設定の奇妙さに惹かれる。ミステリーは基本的には探偵と犯人の対決構図であり、探偵目線で話しが進んでいくのが主流だ。そしてそれを逆手をとるように犯人視点で物語が進んでいく、倒叙ミステリというものがある。わかりやすく言うと古畑任三郎がそうだ。(若い人はもしかしたら知らないかもしれない…)

 

ただハサミ男の場合はどちらとも微妙に違う。ハサミ男は女性を狙った連続殺人犯であり、ハサミで女子高生の喉を刺すからそう呼ばるようになった。そしてこの小説はハサミ男が新たな女子高生を狙う計画をしているところから始まる。

ここで疑問に思った人もいるかもしれない。このまま物語が進めば、先ほどあげた倒叙ミステリと同じではないか?と。しかし、ハサミ男が狙っていた女子高生が別の殺人者に寄って殺されてしまうのである。しかもただの殺人事件ではなく、ハサミ男とまったく同じ犯行手口なのである。「新たなハサミ男の殺人」として世間では認知されていくのだ。

今まで殺人を犯していたのは確かにハサミ男だが、今回の事件では犯人ではないのである。もちろん今までの罪は消えるわけはないのだが、この事件に限っては無実なのだ。ここが設定として奇妙な部分なのだ。

 

殺人を犯した犯罪者なのに、今回の事件では犯人ではない。なぜその女の子が他の人によって殺されたのか、なぜハサミ男とまったく同じ手口なのか。それらの真相を知るために、ハサミ男は少しずつ事件の確信に迫っていくのである。

 

上記の設定に加えて、この小説の一番の肝は淡々と進んでいく日常と、ふと訪れるサイコな異常性だと思う。ハサミ男は猟奇的な殺人者であるにもかかわらず、普通の仕事をして過ごしているのである。その日常と異常のバランスが絶妙なのだ。読んでいて自分自身の心が乱されるような感覚に陥る。種明かしされたときに、僕は思わず「え?」と声をあげたほど混乱したくらいだった。

 

設定が斬新な小説を読み進めていくと、種明かしするときに「あれ?こんな感じか」と尻すぼみしてガッカリしてしまうことがたまにある。入り口が出口を超えないのだ。ハサミ男はまったくそんなことはなく、最初から最後まで幹のある世界観が構築されている。

エピローグまでため息がでるほど美しい作りになっているので、ぜひ読んでみてほしい。出来ることなら記憶を消してもう一度読みたい。

 

 

ハサミ男 (講談社文庫)

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(映画化もされているが僕は見ていない)